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最高の二度寝を求めて|Mymed

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最高の二度寝を求めて

 人間界でいうところの日の出前、奇妙な時間に目が覚めた姫は、ぺたぺたと魔王城の中を歩いていた。無論、最高の二度寝を求めて。最高の二度寝は二種類ある、と姫は常々考えている。第三者により起こされたときの即スヤァと、ふと目が覚めてしまったときの軽い朝の散歩からのスヤァである。そして、この日は後者だった。牢から出て、慣れた道をたどり地下へと向かう。上階層の牢から地下までの道のりは遠いが、慣れたものだ。
 道中に出会ったウシくんことミノタウロスが気さくに話しかけてくる。「おう、姫。また配達手伝ってもらってもいいか?」と。魔王城で牛乳屋も兼任する彼は、こうして早朝に出会うとついでの配達を依頼してくる。姫もついでなので特に断ることはない。もはや牢から出ていることについては誰も疑問に思わなくなってきている。
 ミノタウロスからけんこうミルクを受け取り、姫はそのまま地下を目指した。
 一度は部屋の主がドアの前にいたために手渡しになったが、本来、牛乳配達はドアの前のミルクポストにおいておけばいい仕組みになっている。多くの魔物は寝ている時間である上、いちいち会話していたらミノタウロスの仕事が終わらないからだ。そして、既に起きて仕事の支度を済ませているであろう部屋の主、あくましゅうどうしはミルクが置かれた音を聞いて出てくるので、その間に別の入り口(勝手に作った)から入ってベッドに滑り込むというのがいつもの流れだ。
 姫はいつも通り、わざと小さく音を立ててミルクをミルクポストに置いた。木でできたミルクポストからコトンと小気味いい音がする。

(散歩による程よい疲れ、今日も最高の二度寝は確約されたも同然)

 そんなことを思いながら、ベッドのすぐそばに開けた穴に体を滑り込ませる。慣れた手つきで穴を隠すための箱をどかし、ベッドに潜り込む。横向きの姿勢で寝転んだのだが、少しベッドが沈んでいて、ベッドの中央に向かって体が倒れる。
 暖かい布団、いい匂いのする布団。それはいつもと変わらない。だが、今日に限っては部屋の主は起きていなかったらしい。朝の支度どころか、ナイトキャップをかぶった完全な睡眠姿勢のままである。

(……さすがにこれはまずい)

 寝具のチェックの際にも他人が寝ている横に潜り込んだこともあったが、それは密着しない広さの寝具での話だ。
 同じベッドに入る意味などあまり考えたこともない姫だが、吐息がかかるほどの距離はなんとなくまずいと感じる。特に、あくましゅうどうしにはお説教されてしまうだろう。
 出なければと思いつつ、求めていた寝具の温かさに「もう少しだけ」という二度寝の醍醐味を味わってしまう。これぞ最高の二度寝、という状態に近い。

「姫……」
「!」

 耳元で囁かれたので、姫はぱちっと目を開けた。バレたのかと思えば、寝言らしい。そうだ、お説教される前に出よう、とようやく姫は起き上がる決意をした。

(なんだか寝れなくなってしまったし)

 驚いて心臓がドキンドキンと跳ねている。姫があとでのろいのないかいのところへ行こうと思いつつベッドから起き上がろうとした瞬間、後ろから引っ張られた。

「!?」
「でびあくま、だめだよ。寒いから行かないで」
(まさか、でびあくまと間違えてる……だと……!?)

 あくましゅうどうしの腕にしっかりと抱きしめられて、姫は抜け出せなくなってしまった。
 でびあくまを抱いて寝るのは何も姫だけではない。特にあくましゅうどうしは、姫が抱いて寝ていたでびあくまを見つけだし次の日に抱いて寝ていることがある(通常運転)。そのため、姫のはちみつシャンプーの匂いが香るでびあくまに何の疑問も抱かない。
 たとえばこれが魔王であったなら寝ぼけていても違和感に気付いただろう。とはいえ、魔王の寝具は姫の二度寝場所ではないので魔王相手には起こることはないのだが。

(……力……強い……)

 いつもの優しい扱いと違って、無意識のそれは全く振りほどけなかった。ぬーっと声を出し、さらに力を入れてみても歯が立たない。

「本当に何をしても起きないな、レオくんは」

 姫がボソッと呟くと、あくましゅうどうしは返事をするかのように再び寝言で姫と呟いた。吐息が耳にかかってくすぐったく、姫は少し身を捩らせた。そうしつつも、説教から逃れるためにどうしたらいいのかばかりを考える。寝転んでいるのに眠れないなんて、と姫は少しむくれた。

(二度寝をしにきたのに……、ぬくもりも、匂いも、ちょうどいいのに眠れない……。でも落ち着くし……、いっか)

 数分の膠着状態の後に、姫は考えるのを放棄し深いまどろみに沈んでいった。もぞもぞと寝返りをうち、明かりを避けるために彼の胸板に額を押し付けて。
 魔王城内に地下からの絶叫が轟くまで、あと数十分。